初めてのスネアドラム選び(スティール&アルミ編)

今回は「間違いなし!マイファーストスネアドラム」についてご紹介します。

自分のスネアが欲しい!と思っても初めは何を買ったら良いのかわからないもの。
数々の名機をメンテナンス&持ち運びのしやすさを踏まえて、スティールとアルミに絞ってご紹介しています。

目次

定番のスネアサウンドを知る

Ludwig Supraphonic LM400・402

スネアドラム界には定番のサウンドが存在します。

Ludwig Supuraphonic(ラディック・スープラフォニック) LM400・402
恐らく人類が一番聴いているであろうスネアドラムの音です。

70〜80年代の音楽が商業的に一番盛り上がりを見せていた時に多くのレコーディングで使用されていたとされています。それだけにスタンダードな音としてドラマーの中で今も強い人気を保持している名機です。

ちょうど良い反応速度、幅広いチューニングレンジ、そして何処かで聴いたことのある馴染みのある音…
初めてスネアを持つ方や、オールラウンドなスネアを探し求めている方には間違い無いでしょう。

素材はラディアロイと呼ばれるナゾの合金(基本アルミにクロームメッキを施した物)。

実は生産が始まったのは60年代と歴史がある楽器で、市場に出回っている多くの「オールド」と呼ばれるのは、70〜80年代のものが多いです。

LM400

LM400はスティーブ・ガッドを初め多くの著名ドラマーが愛用していたことで有名。
ガッドがYAHAMAで自身のシグネチャーを出す際にも、このLM400を参考にしたのだとか。

幅広い音楽にマッチする取り回しの良さはロングセラーの理由がわかります。

LM402

深さが6.5インチのLM402はジョン・ボーナムが愛用していたことで有名に。

当時はボーナムのサウンドを再現するために、42本のスナッピーを皆使っていたそうですが、今でもそのサウンドを再現したいドラマーは後を立ちません。

Acrolite

ラディックの名機として忘れてはいけないのが「AcroLite / アクロライト」です。
スープラフォニックをマイルドにしたようなスペック、サウンドでプロ、アマを問わず愛用者が非常に多いスネアです。

元々はスープラフォニックのクロームメッキを塗らないコストパフォーマンスに優れたモデルとして「ジュニア向け」として販売されていましたが、ジュニア向けならぬクオリティは多くのドラマーの耳にとまった様です。

スープラフォニックよりドライで落ち着いたサウンドをお求めの方にはぴったりです。

LM404C10

5インチは2021年に実は廃盤になっていたのですが、2023年に復活!

発売当初から長くチューニングボルトの数は8テンションでしたが、現代のサウンドに対応するために10テンションに。より細かく、安定したチューニングが可能となっています。

LM405C

LM404C10よりも6.5インチならではの太さと音量感があります。

オールドと現行品

Supraphonic、Acroliteにはオールド(60〜80年代)と現行品があります。

  • オールド(ヴィンテージ)は金属の経年劣化や、金属の配合率により、その時代の楽器にしか出せない音がある
  • 現行品(年代が新しい)はパーツの精巧さや機能面で部が上がる

音ではオールドの方が良い!と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、長期的に安定して使い続ける為にはパーツの新しさは見逃せないところ。現行品でも長い時間をかけて自分の音にしていく楽しさがあります。
何よりオールドは15万円近く…と引くほど高いです。

現行品でもオールドに近づけたい!という場合はフープを変えてみるといいでしょう。
現行品はフープが少し厚く、沈むような重ための音がしますが、軽いフープにすると飛ぶような軽やかな音になります。

新品か中古か

良いスネアなのはわかったけど値段が高いよ…!そう思ったのは貴方様だけではありません。
現行品でもスープラフォニックは8〜10万円と中々手が出しがたくなってしまいました。アクロライトは少し下がって8万円ぐらいですね。

もちろんおサイフに余裕のある方は「サクッ」と買ってしまいましょう!
人気商品なだけあり、中古市場にも多く出回っていますが、値段が下がりにくく、リユースに強いです。

しかし、多くの方が値段を抑えるにはどうするか…と考えるハズです。そこでオススメの方法をこれからご紹介します。

良質な中古品を探す

前述の通り、最も売れたであろうスネアなので「中古品」も多く出回っています。
デジマート、メルカリ、ヤフオク…様々な場所に彼らはいます。

楽器店の中古品
  • 取扱店舗によっては試奏ができる
  • 劣化している場所などの明確な特定
  • 最低限の返品保証がついている場合がある
  • 店舗で出している為、個人間の中古よりも値段が高め

安心材料が多く、少しの値段を出せるのであればオススメです!

個人間の取引(メルカリ、ヤフオク等)
  • 試奏ができない事がほとんど
  • 写真から状態を判断するのみ
  • 返品不可の場合が多い
  • 上手くいけば安くて良いものが手に入る

個人間は現物の確認や試奏ができないので、不安点も多いですが、気になるところは出品者に質問攻めするなどして解消しましょう。

他オススメのスネア(名機のパクリを探す)

…そうなんです。大ヒットしたスープラフォニック、アクロライトは外観は変わりつつも、他社からも同じ様〜なスペックで出されています。

本家では手の届かなかった部分や、コストパフォーマンスに優れる商品もあり、見逃せないポイントとなっています。

スチールのスネアもご紹介していますが、各メーカーがスープラフォニックのサウンドをスチールでも表現しようともしていました。

Pearl

日本のメーカーでも特に長い歴史をもつパールドラムス。堅牢な作りは多くのアーティストから信頼されています。

US1450

※動画はChad Smithモデルですがサウンドは殆ど同じです。

名機のChad Smithモデルがスタンダードとして定着したモデル。

1m厚のスチールにブラックニッケルが施されたまとまった音像と、チューニングのし易さ、お求めやすい価格でプロ、アマを問わず定番のスネア。5インチならではの歯切れの良いサウンドも◎
本家のChad Smithモデルも中古市場で手に入れやすいです。

STH1450S

Pearlのセンシトーンシリーズの定番スチールモデル。
サイズとスペックからスープラフォニックを意識してるのが感じられます。

Chad Smithモデルより少し明るいサウンドで、同じく人気モデルです。価格もお手頃なのも素晴らしいですね。

6.5インチモデル

STE14575SC

スチールにクロームが塗装されており、倍音が適度にコントロールされています。

チューブラグと5.75インチという珍しいスペックですが、このシェルサイズによって鳴りと扱い易さがバランスよく保たれています。インサイドマフラーによってサスティンの切り替えもし易いです。

ヴィンテージライクな美しいルックスにも惚れる方は多いハズ。ちょっと個性的だけど扱いやすいスネアをお求めの方にオススメ!

Pearl スネアドラム STE14575SC 14 × 5.75

STH1450AL

Pearlのセンシトーンシリーズのアルミモデル。
倍音が抑えられ、アンサンブルへの馴染みが良いのが特徴です。スティールより落ち着いた音色をお求めな方にオススメ。

6.5インチモデル

IP1465 Ian Paice モデル

Ian Paceのシグネチャー。シェルはスチール。

スープラフォニックのLM402を意識して作ったと言われるサイズとスペックは見かけによらずどんなジャンルでも使える懐の深さがあります。

インナーミュートも付いており、サウンドメイクの幅も広いです。
テンションボルトロックによりチューニングが狂いにくいのも実用的。

PEARL スネアドラム IP1465 Ian Paice 14×6.5

Yamaha

Yamahaは楽器以外にも多くの工業製品を手がけた技術力で、安定した楽器を出し続けています。
演奏者の個性をそのまま反映させるような、なるべくプレーンなサウンドが特徴的です。

SSS1455

1m厚のスチールシェルに、1.5mのフープで軽やかなサウンドが特徴。エントリーモデルとされていますが、クオリティは流石のヤマハ。素晴らしいコストパフォーマンスです。

重たいサウンドにするにはフープを厚めのものに交換するのがオススメ。

6.5インチモデル

RLS1455

スティーブ・ガッドが開発に加わったレコーディングカスタムシリーズ。
ステンレススチールによる歯切れの良さと明るさが抜けの良さを際立たせています。

標準は20本スナッピーですが、5.5インチのみ10本スナッピーが付属しておりサウンド変化が楽しめます。

よりパワーを求める方には7インチもあります。

RAS1455

前記のレコーディングカスタムシリーズのアルミモデル。スティールよりもドライで落ち着いたトーンが特徴的です。

TAMA

Pearl , Yamahaに並ぶ歴史あるメーカーであるタマドラムス。
近年では革新的なアイデアと、現代のサウンド作りにマッチした方向性を積極的に打ち出しており、メーカーの勢いを感じます。

NSS1455

数々のJ-Popのレコーディング、ツアーを務める「そうる透」さんがプロデュースされたモデル。
「低価格でも良い音を」をコンセプトに作られ、手の届きやすさと使いやすさでロングセラーとなっています。
LM400を意識して作ったと本人も語っており、チューニングのしやすさが秀でています。

TAMA独自配合のシリコンをエッジ折り返しに塗っており、高域の倍音コントロールに効果を発揮しています。8テンションのチューニングボルトも初心者には扱いやすいです。

よりタイトなサウンドの4.5インチモデルも出ています。

LAL1455 / S.L.P

S.L.Pシリーズからアルミモデル。
アルミにしては少し厚めの1.2mmと2.3mmフープで存在感がありながらもドライな音色はアンサンブルに馴染みやすく、コントロールがしやすいです。シェルに繋ぎ目を無くすことで剛性を高め、鳴りを引き出しているのもポイント。

スペックからラディックのアクロライトと比較されることが多いですが、こちらの方がまとまりのあるサウンド。
8テンションでチューニングもしやすく、お値段も3万円前半とコストパフォーマンスにすぐれます。

PAL146 Starphonic Aluminum

スターフォニックシリーズから同じアルミシェルモデル。

LAL1455と比べてラグとフープに厚みがあり、6インチの深さも相まってパワーと締りがあります。

Canopus

日本屈指の職人集団で結成されたカノープスドラムス。

Canopusは前記3社と比べれば歴史は浅いですが、妥協を許さない姿勢は海外からのファンも多く獲得しています。

JSA-1450 / JSA-1465

生産終了してしまいましたが、Canopusの数少ないアルミスネア。サイズも5 & 6.5 とLMシリーズを意識しているのがわかるモデル。
8テンションならではのチューニングのしやすさと、程よいタイトなサウンドはとても扱いやすいです。
たまに中古市場で泳いでいますが、価格は2〜3万とそれほど高くないです。

AA-1460

LM400,402をコンセプトとして作られたスネア。
長年の研究の集大成とも言われるスネアはこだわりが詰まっています。

深さはラディックには無かった6インチが採用されており、現代の音楽を想定した音量感が出せるようになっています。

10万近くとお高いですが汎用性の高さはピカイチです。
マットブラックに塗られたアルミシェルのルックスも際立っていますね。インナーマフラー付きなのも◎

Sonor

創業140年を超えるドイツの老舗ドラムメーカーソナー。長年の確かな技術力は製品から言わずもがな伝わってきます。
全体的にお値段は高めですが、ソナーにしか出せないサウンドがあります。

KS-14575SDS

ソナー初のメタルスネアコンセプトシリーズ。
シェル径がわずかに小さく成型されており、ヘッドからシェルへの振動伝達がよりナチュラルになっています。

5.75インチのシェルはSonor発祥だそうで、5.5インチの取り扱いやすさと6インチの音量感をバランスよく取り入れています。

何よりこの価格でSonorサウンドを堪能できるのは驚きのコスパです。
太くて抜ける、でも嫌味じゃない素晴らしいモデル。他サイズ展開は6.5インチがあります。

KS-140575-SDA

メタルスネアコンセプトシリーズのアルミ。
2mm厚のアルミシェルはドライでありながらもパワーがあります。

音が軽くなりすぎず、かつまとまりの良さも生かされ非常にバランスの取れたモデルです。
前述のKS-14575SDA スチールと叩き比べてみるのも面白いですね。スティールと比べるとお値段はお高め…

他サイズ展開は6.5 と 8 インチまであるのが特徴的。

Sonor スネアドラム KS-140575-SDA 14×5.75

番外編

Ludwigのメタルスネアドラムはまだ名機があるので軽くご紹介…!

Black Beauty

ラディックのもう一つの名機としてブラックビューティーがあります。

一枚のブラスをシームレスに加工し、ブラックニッケルメッキ加工がされた1.2mmの厚のシェル。
豊かな倍音とサスティーンが特徴的で、シャープさと丸みがあるサウンドはどんな楽曲にも混じる懐の深さがあります。

LB416

実はスープラフォニックよりも先にヒットしたモデルです。
それもそのはず、発売がされたのは1919年頃と既に一世紀経っている程の歴史があります。

何故オススメのスネアとして最初に出さなかったのは…価格と手に入れ難さにあります。
製造工程が今でも複雑なため、年間製造数は限られています。手に入れるまで時間がかかるんですね。

そして価格は現行品でも最低11万からと勇気のいる値段です。

6.5インチ モデル

スタジオノアさんが更に詳しく解説している記事はコチラ

Black Beautyのパクリ

ブラックビューティーにも数は少ないですがパクリがあります。
仕様は若干異なり、サウンドも少し離れますが、価格は半分以下…と見逃せません。

Pearl / SG1460 Shane Gaalaas

※動画はコーテッドCSが張られています。

B’zのサポートドラマーとして有名なシェーン・ガラースのシグネチャーモデル。

ブラスシェルにブラックニッケルメッキと、スペックがほぼブラックビューティーです。
シェル厚は1.0mmと本家より若干薄く、ライトなサウンドが特徴的ですが、Pearlのダイキャストフープによってパワーを獲得しています。

ハードヒッターのシェーンに合わせて、厚めのREMOエンペラーXを貼ってロック!な感じですが、通常のヘッドにしたら繊細な音も出せそうです。

Tama / LBR1465 S.L.P

TAMAのS.L.Pシリーズからブラックブラスが特徴的なモデル。
シェル厚が1.5mmと本家Black Beautyより厚めのシェルでパワーがあります。
内側にはスティールプレートが入っており、シェル強度を更に向上させより芯の太いサウンドを獲得しています。

標準では42本のスナッピーがセットでロック向け!な仕様ですが、ブラス特有の甘いトーンも持っており、カスタマイズによってポップスでも全然使える幅の広さがあります。

販売から10年以上経っても主力であり続けるTAMAの隠れた名機。

迷った時は

さて様々なスネアを紹介してきましたが「結局何を選べば良いのかわからない…!」となる方も多いはず。
そこで以下のポイントを抑えましょう。

  • 予算をどこまで出せるか
  • 叩いた音・感触が気持ち良いか 
  • 音源を聴きながら叩いて違和感がないか
  • お気に入りのドラマーが使っているメーカーを参考にする

予算をどこまで出せるか

気に入った楽器が見つかったら値段は関係ない!と言いたいところですが、多くの方のお財布の紐はそれほど緩くないもの(当社比)

予算をある程度決めてしまえば、買うべきスネアも絞れてきます。

叩いた音・感触が気持ち良いか 

レビューに書かれているサウンドと、実際に叩いた感覚が違うことは多々あります。
知識と感覚がまだ少なくても「叩いて気持ち良いか」自分の感覚に素直にしたがって選ぶのがオススメです。
曖昧な表現ですが、楽器に気持ちをどこまで乗せられるかはとても大切です。

音源を聴きながら叩いて違和感がないか

あくまでもイメージをすり合わせる手段ですが、音源を聴きながら叩いて馴染むものは、スネアドラムに限らず使いやすいことが多いです。

楽器屋さんでスピーカーで音源を流しながら試奏することは難しいですが、イヤホン・ヘッドフォンならなんとか出来ますね。

耳馴染みのあるスネアサウンドを探してみましょう。

お気に入りのドラマーが使っているメーカーを参考にする

同じようなサウンドで迷った時は、お気に入りのドラマーが使っているメーカーも参考にしてみましょう。
そのドラマーさんが使っている理由や経緯などがわかると、良い判断材料になります。

今回のことが少しでも皆さんのスネアドラム選びに役立てば嬉しいです!

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