ドラムを初めて間もない方や、色々使ってみたいけど違いがわからない!
といった方々にスティック選びのコツを詳しくご紹介いたします!
スティックの部位
スティック一本の中には部位が分けられており、それぞれに役割があります。
一つ一つ見ていきましょう。
ドラムスティックの先端部分を「チップ」と呼びます。
チップの形状や素材が変わるとドラムの音色が変わります。
最もドラムセットに触れる部位なので、スティックのキャラクターを決める重要な部位です。
チップとショルダーのつなぎ目が「ネック」です。
ネックの太さや長さが変わると、バランスや反応性に影響が出ます。
ネックからグリップにかけて太くなっている部分を「ショルダー」と呼びます。
シンバルの端っこを叩いたり、スネアドラムでクローズドリムショットをする際に使用します。
スティックのショルダーからネックにかけての「角度、傾斜」を「テーパー」と呼びます。
スティックのバランスや音の響きに大きく影響を与えます。
スティックを握る手の位置にあたる部位を「グリップ」と呼びます。
グリップの「太さ」は握りやすさやフィーリングに大きく影響します。
素材も一般的なウッドに加え、ゴム性のラバーや、特殊な塗装が施されているものもあります。
グリップからショルダーにかけての部分を「シャフト」と呼びます。
シャフトの太さや素材によってバランスや反応性が変わります。
ドラムスティックのグリップの終わりにある部分を「エンド」と呼びます。
チップより太い形状をしているので、あえてエンドで叩くことにより、太い音色を出す場合もあります。
メーカーによって形状も異なるのも特徴です。
長さ
ドラムスティックの長さはコントロール性に大きく影響します。
標準は「400mm 」程で 398〜409mm までが一般的な太さですが、これ以外は少し特殊なモデルと言えます。
長さによる音色やバランスの変化をみてみましょう。
- しなりが利用できやすく、遠心力かかりやすくなる
- 重心が先端寄りになるので、大きな音量が出しやすい
- リーチが伸びるので、遠くのシンバルやタムが叩きやすい
- バランスが掴めれば一定の音量でプレイしやすい
- 重心が手元よりになり、取り回しがしやすい
- 長いスティックに比べ質量が減っているので、軽やかな演奏がしやすい
- 小さな音量が出しやすい
- 音色変化がつけやすい
それぞれに特徴がありますが、スティックの「グリップする位置」を変えることで
短いスティックでも大きな音を出せたり、長いスティックでも小さな音を出すこともできます。
実はいずれの短所・長所も振り方や持つ場所によってある程度解消することもできます!
太さ
スティックの「太さ」はコントロールとプレイスタイルに大きく影響します。
標準は「14mm」程で 13〜16mm までが一般的な太さですが、これ以外は少し特殊なモデルと言えます。
長さによる音色やバランスの変化をみてみましょう。
- 指への接着面積が増えるため、力が伝わりやすい
- 質量が増えるので、太い音が出しやすい
- 安定した音が出しやすい
- リムショットの音も太くて安定しやすい
- 重量が増えるのでバランスコントロール必須
- 接着面積が少ないため、繊細な動きに向いている
- 質量が減るので小さい音が出しやすい
- 軽やかで速いテクニックがしやすく、小回りが効く
- 音色変化をつけやすい
- 重量が減るので遠心力がかかりづらい(大音量を出しづらい)
それぞれに特徴がありますが、人それぞれ手の大きさも違います。
もし迷ったらあまり考えすぎず、振りやすい、握りやすいものを選ぶのがオススメです!
実はいずれの短所・長所も振り方や持つ場所によってある程度解消することもできます!
重さ
スティックの「重さ」は音量とコントロールに大きく影響します。
一本「45〜50g」が標準的な重さです。下は40g程、上は60g程まであります。
スティックは木でできている為、個体差があります。
同じモデル、型番でも重量が異なるものから選べます。
- 小さく、軽やかな音が出しやすい
- スティックの剛性をコントロールしやすいので、音色変化がつけやすい
- 重たいスティックに比べて大きな音が出しにくい
- 太くしっかりした音が出しやすい
- スティックの剛性が強くなりやすいので、安定した音が出しやすい
- リムショットの音が太くて安定しやすい
- 軽いスティックに比べて小さな音が出しにくい
重さによる短所・長所も身体の使い方やタッチによってある程度解消することもできます!
材質
スティックは使われる材質によってキャラクターが大きく異なります。
- ヒッコリー
- メイプル
- オーク
- 金属系
それぞれの特徴をみていきましょう。
- ドラムスティックで最も多く使われる素材
- 柔軟性と堅牢さから家具やスキー板にも用いられる
- バランスがよく、柔軟性と耐久性が両立するためドラムスティックに向いている
- サイズや形状にバリエーションがあり、プレイヤーの好みに合わせて選択できる
- ジャンルを問わずに使える、汎用性の高い素材
- メイプルはドラムスティックで比較的軽く、柔らかい素材
- 音の立ち上がりが早く、反応性が高いため、ジャズやフュージョンなどの軽快な音楽ジャンルに適している
- 耐久性はヒッコリーに劣るが、柔らかい音色が特徴。特にシンバルの音色が美しく響く
- 主にアメリカカナダに分布し、ドラムセットやギターの代表的な素材でもある
- ヒッコリーに比べて密度が高く、重い素材
- 強い打撃に耐えることができ、よりパワフルなサウンドを出すことができる
- ヘビーメタルやハードロックなど、ハードな音楽ジャンルに向いている
- 柔軟性が少ないのでしなりが感じにくく、音色変化がしづらい
- 素材が安価なのでスティックもリーズナブルでコスパが高い
- 高い耐久性から家具に使われることも多い
- アルミ
-
- 軽量で耐久性があり、強いアタックが出せる
- チップはナイロンでクリアで安定した音色
- ロックやメタルで使われることが多い
- 柔らかい音色は出しにくい
- 木製に比べ重い
- 代表的なメーカーは「AHEAD」
- カーボン
-
- アルミよりさらに軽量化しやすい
- アルミよりしなりがある
- チップは同素材のものが多い
- ロックやメタルで使われることが多い
- 柔らかい音色は出しにくい
- 木製に比べ重い
- 金属製のスティックは耐久性が高く、長持ちしやすいため、コストパフォーマンスが良いというメリットがあります。
- 木材に比べると非常に硬く、重いため、ヘッド部分が割れたり、変形したりすることがあります。
- 木製のスティックとは重量バランスが異なる場合があるため、演奏感覚が異なる場合があることも注意が必要です。
たくさんありますが、迷ったらバランスの取れたヒッコリーがオススメです!
チップの形
チップの形は楽器から奏でられる音色に強い影響を及ぼします。
- 丸型(ラウンド型/ボール型)
- 角型(スクエア型/円柱型/俵型/樽型)
- 涙型(ティアドロップ型)
- 三角型(円錐型)
- チップレス
- ナイロン
それぞれの特徴を見てみましょう。
ボール (ラウンド,丸型)
- リバウンドが得られやすい
- 粒立ち良いシンバルの音色が得られる
- どの角度からも均等にあたるため安定した音色を得られる
- 打面への接着面積は比較的小さいので音量は控えめ
- クラシック、マーチングスティックに多くみられる
スクエア(俵型/樽型/円柱型/角型)
- 打面への接着面積が広い分、ボールよりパワーが出しやすい
- リバウンドが得られやすい
- どの角度からも均等にあたるため安定した音色を得られる
- 丸型より太いシンバルの音色
- ロック、ポップスで多く使われる
- チップが小さいモデルはジャズでも使われる
アコーン(おにぎり型)
- 角度によって音色変化がある
- 打面に対して平行にヒットすると接着面積が広くなり大きな音量が得られやすい
- 打面に対して角度をつけると接着面積が小さくなりシャープな音が得られやすい
- 音、コントロールのバランスが良く、多くのモデルがある
ティアドロップ(涙型)
- アコーンより丸みを持たせたチップ
- 角度によって音色変化がある
- アコーンより丸みがつくことでリバウンドしやすい
- シンバルの音色がクリアに出やすい
エッグ(タマゴ型)
- ボールとアコーンの中間
- 音色変化が出にくいが適度なリバウンドが得られる
- 音のつぶ立ちが得られやすい
- シンバルの音色がクリアに出やすい
ナイロンチップ
- 木製に比べて硬質で明瞭な音
- 一定のタッチが表現しやすい
- 木製に比べて欠けにくい
- 意外とジャンル問わず使われる
- 寿命がきたら一気にネックから取れる、割れてしまう
ノッカー(チップレス)
- チップが無く、和太鼓のバチの様な形状
- 主にパーカッションで使われる
- ドラムセットではロックで使われることが多い
- パワーに特化
- シンバルをバランスよく鳴らすにはコントロール力が必要
アコーンはバランスが良いので、迷ったらオススメです!
塗装 / 仕上げ
ほとんどのスティックには薄くラッカー(ニス)塗装が施されており、
湿気からの保護、グリップ感、スティック自体のサウンドに影響します。
各メーカーによって特色があり、手触りの好みも分かれます。
- 最もポピュラーな塗装
- 厚めの塗装は滑り止め防止の効果が高く、力の伝導効率が上がる
- 厚めの塗装はクリアな音になるが、好みが別れる
- 手汗をかきやすい場合は逆に滑りやすい
- シグネチャースティックに多くみられる塗装
- 厚めの塗装だがサラッとしているタイプが多い
- チップは普通のクリアで塗装されているものが多い
- 多少の手汗はOK
- 殆ど塗装がかかっていない仕上げ
- 木の質感をより感じられる
- 手汗をかきやすくても滑りにくい
- 反対に乾燥しやすい場合は滑りやすい
- ニスの仕上げがない
- ナチュラルよりさらに「木感」がある
- 手汗をかきやすくても滑りにくい
- 湿気の影響を受けやすい
- 安価なスティックにもみられる
迷ったらまずはクリアラッカーで手との相性を試してみましょう!
重心バランス
同じ重量のスティックでも形状が違えば、バランスも異なります。
「テーパーのかかり具合」によってバランスがチップ側か、グリップ側なのか変化します。
- テーパーが長い(先端に向かって緩やかに細い)
-
- 遠心力が下がる分、手元のコントロールがしやすくなる
- バランスが良く、細かなテクニックがしやすい
- 音がマイルドで、繊細な音色を出すことができる
- テーパーが短めと比べて遠心力がかかりにくいので、パワーがのりにくい
- テーパーが短い(シャフト部分が長い)
-
- 重心が前に行くことで遠心力が上がるため、大きな音を出しやすい
- 音がシャープになり、タムやシンバルの音をはっきりと出すことができる
- 太くなるのでショルダー、ネックの耐久性が上がる
- コントロールできないと重く感じ、テクニカルなプレイがし難い
同じ重さのスティックでも、テーパーのかかり具合で振りやすさが変わります。
迷ったら手軽にコントロールがしやすい「テーパーが長めのスティック」がオススメです!
表記の意味
スティックのグリップにはそれぞれモデルの表記がついています。一つずつ意味を見てみましょう。
- 数字表記は「細さ」を表しています。
- 1−9まであり、高くなるほど細くなっていきます。
- 数字に対して明確に細さが決まっている訳ではありません。
- A = Orchestra 用
- B = Band 用
- S = Street 用
- D = Dance 用
等々、1970年代ごろまで用途が振り分けられていましたが、今は分け隔てなく使われることが殆どです。
メーカーやモデル別に意味合いも異なります。
例)Pearl 110 HC
- H = Hickory = 素材の種類
- C = Clear = 塗装の種類
例)Vic Firth AJ1
- A = American
- J = Jazz
有名ドラマーのシグネチャーモデルや、方向性を持ったスティックには型番ではなく固有名詞がそのまま印刷されていることが多いです。
アーティストのこだわりや、サウンドの秘密が見えるので、お気に入りのドラマーさんのモデルが出ていれば、一度手に取ってみることがオススメです。
スティックの選定
今は通販で気軽に&安く購入できるのが便利ですが、
出来るだけ楽器屋さんに足を運んでスティックを選ばれることをお勧めいたします。
何故ならスティックには「個体差」があるからです。
メーカーによって誤差の範囲は異なりますが、木製なのでどうしても「個体差」が生じます。
スティック選びで気をつけるべき点を見ていきましょう。
重さ
まずはスティックの「重さ」を確認してみましょう。
多くがペアで販売されていますが、たまに左右の重量が異なったりします。
- ベアで売っていても…
- 計りに乗せると…
-
なんと2gも誤差がありました…!
楽器屋さんには「電子計り」が置いてある所が殆どです。
ご購入される前に必ずチェックしましょう!
反り具合
次はスティックの「反り具合」です。
湿度や木の状態によって新品でもすでに反ってしまっているものがあります。
確かめる方法はスティックを平らな所で転がしてみましょう。(地面はNG)
止まらずに「コロコロ〜」と転がって行く様でしたら真っ直ぐな印です。
出来るだけまっすぐなペアを手に入れたいですね!
ピッチ(音程)
重さも一緒、反りもない、とまできたらスティックの「ピッチ、音程」を確認してみましょう。
- 利き手でスティックを持ち練習台でなるべくスティックを鳴らすように打つ
- 利き手でスティックを持ち自分の頭側面(同じ側)を叩く
既にスティックをお持ちの方は、試してみましょう。
いかがでしょう?スティック自体の「鳴り」が聴こえてきませんでしょうか?
初学者の方は分かりやすい「自分の頭を叩く」ことがオススメです。(優しく)
スティックも立派な楽器なので、ピッチが揃っていると均一なタッチに繋がります。
特にトレーニングパッドで練習する場合にはスティックの鳴りが聴こえやすいので
左右を均等に使う重要な要素の一つですので、チェックしてみましょう!
木の密度
同じ重量でも木の密度、つまり具合によっても「重心」「ピッチ」が変化します。
ピッチは先に申し上げた通りですが、重心の位置が「手前」か「先端」で変わると以下が異なってきます。
- コントロール性
- パワーの出しやすさ
同モデルでは誤差は少ないですが、考慮しておきたいポイントです。
- ペアで売っていても計りを使って重量を揃える
- スティックの鳴り、ピッチを揃える
- 転がして反っていないか確かめる
- 振ってみて、左右の重心が揃っているか確かめる
ドラムって音が大きいからスティックの小さい音なんてあまり関係ないんじゃないの?
…と思うかもしれませんが、結構耳障りが変わります。
特にシンバルのボウの部分は音程が非常に変わりやすいですね。
初めはなるべく均一でパーフェクトなペアを探し出しましょう!
表現、奏法のために、あえてピッチ、重量を異なるものをペアにする場合もあります!
単純に音色が増えるので選択肢が広がるという考えです。
スティックの寿命
練習を重ねているとスティックが段々削れてきたり、ささくれ立ってきます。
ドラマーさんによっては完全に折れるまで使い倒す方もいますが、
- チップがかける
- 亀裂が入っている
- ショルダーが削れすぎてバランスが変わっている
等の状態で使うと音色も安定しなくなり、叩き方に変な癖もつきやすくなります。
何より本番に折れてしまうのは怖いですよね…
使い込んだスティックは不思議と手に馴染んできます。
手放すのは名残惜しいですが、新しいスティックに変えましょう!
オススメの定番モデル
で、初めは何を買えば良いの…???
という事で、ここからは「初めの1セットとしてオススメのスティック達」をご紹介いたします。
Vic Firth 5A
材質 | ヒッコリー |
チップ | ティアドロップ |
長さ | 407 mm |
太さ | 14.4 mm |
- 世界シェア率No.1のVic Firth標準モデル
- オールジャンル対応できる懐の深さがある
- 重心が少し先端にある為、適度なしなりと重さが出せる
- アメリカ人を標準としている為か、日本人の体型には少し大きめ
- 手の大きい方や身長170cm以上の方にオススメ
ドラマー界で標準とされている名スティックで、ドラムを始めたらまずはコレ!と言われています。
太い音も繊細な音も出しやすいティアドロップチップで、適度な長さのシャフトによりパワーも乗せやすいです。
サウンド、コントロールにおいて非常にバランスが良く「名機」と呼ばれているのがよくわかります。
重心が少し前側にあるので、バランスポイントがつかめてないと個体によっては重く感じるかもしれません。
そんな方は次にご紹介するスティックがオススメです。
Pearl 110 HC
材質 | ヒッコリー |
チップ | バレル |
長さ | 398 mm |
太さ | 14.5 mm |
- 日本国内で人気の高いモデル
- バレルチップで安定した音色が得られる
- Vic Firth 5Aに比べて短く(- 0.9 mm)、若干太い(+ 0.1 mm)
- 手前重心の為、初心者でもコントロールしやすい
Vic Firth 5Aがちょっと大きいかも?と思った方にオススメのモデルです。
約1cm 短い長さで取り回しがしやすく、0.1 mm 太くなったことにより、手への接着面積が増えて力を逃しにくくしています。
重心が手間側にあることでコントロールがしやすく、定番の一本としてオススメできます。
ラッカーが厚めのもの
乾燥肌で手からスティックが滑ってしまう…そんな方にはラッカーが厚めに塗ってあるモデルがオススメです。
手に上手く引っかかってくれると、握り込みすぎず、ラクに演奏することにつながります。
ラッカーがチップまで塗ってあるものはサウンドも少し高域が強調されるのも特徴です。
自分にあったスティックとは
たくさんの種類があるスティックの中から選ぶのも楽しいことの1つです。
始めた頃のスティックをずっと使っていたり、人にオススメされたスティックだけを使っていたりされないでしょうか?
もちろんご自身に合っていれば良いのですが、様々なスティックを試してみることで
- 音色変化
- リバウンドのフィール
- 重心コントロール
などの要素をそれぞれのスティックから感じることができます。
スティック1つで同じ楽器でも音色がガラリとかわり、新たな発見があります。
自分にとってベストなスティックを見つける為に、様々なスティックを使ってみましょう!